
2026年、日本の地域金融は、100年に一度の「大集約」の渦中にある。
長らく地銀を苦しめてきたゼロ金利の呪縛が解け、日本銀行の利上げによって「金利ある世界」が完全に定着した。しかし、この環境変化は、全ての地銀に等しく恵みをもたらしたわけではない。むしろ、経営体質の「真の実力」を白日の下に晒し、生き残る「強者」と、淘汰される「弱者」を残酷なまでに分断した。
本記事では、2026年現在の地銀再編の深層を、財務データ、独自シミュレーション、そして全国62の第一地方銀行の実名リストに基づき徹底解剖する。
2026年、地銀を襲う「二極化」の正体
2026年3月期決算の足音とともに、市場が突きつけているのは「資本効率」という名の審判だ。かつて、地銀の経営は「地元への貢献」という曖昧な言葉で、その非効率性を隠蔽することができた。しかし、東証によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れ改善要請と、断続的な利上げがその壁を崩した。
利上げが「毒」になる銀行、 「薬」になる銀行
金利上昇局面において、勝ち組地銀(しずおかFG、千葉銀行、ふくおかFG等)は、預金コストの上昇を巧みにコントロールしつつ、貸出金利の引き上げに成功している。対照的に、負け組地銀は、ゼロ金利時代に実行した「超低利・長期固定」の住宅ローンや事業融資が足かせとなり、逆ざやリスクに直面している。
「ありあけモデル」という外圧
2025年に千葉銀行と千葉興業銀行の統合合意を演出した「ありあけキャピタル」に代表される投資ファンドの動きは、2026年に入り全国へ波及した。PBR0.3倍台で放置されている地銀に対し、株主提案を通じて「規模の拡大」か「身売り」を迫る動きは、もはや日常の風景となった。
【完全網羅】第一地方銀行「勝敗」分断マップ
ここで、最も注視すべき「全国62の第一地方銀行」の現状を地域別に俯瞰する。これは単なる規模の比較ではない。収益力、DXへの対応、そして再編の主導権を握っているかという観点からの「生存偏差値」である。

地域別:第一地方銀行「勝敗」完全分断リスト(2026年最新版)
| エリア | 👑 勝ち組(再編主導・自立生存) | ⚠️ 負け組(再編予備軍・従属・淘汰対象) | 勝敗を分けた決定的な理由 |
| 北海道・東北 | 北海道、七十七、秋田、岩手、東邦 | 青森、みちのく、山形、荘内 | 広域圏での圧倒的シェアを持つ七十七銀らが勝者。一方、プロクレアHD(青森・みちのく)はシステム統合コストが重く、人口減のスピードに収益が追いつかない。山形県勢は再編圧力が限界に達している。 |
| 関東 | 横浜、千葉、常陽、足利、群馬、武蔵野、きらぼし | 筑波、千葉興業 | 千葉・横浜などの「メガ地銀」が他地域を圧倒。SBI等との連携に頼る筑波や、千葉銀主導の再編に飲み込まれた千葉興業は、独立した成長を描ききれていない。 |
| 中部・北陸 | 静岡、八十二、第四北越、北國、十六、百五 | 清水、富山、福井、大垣共立、三十三 | 投資銀行化した静岡銀、DXで先行する北國銀が君臨。規模が最小クラスの富山や、統合シナジーの発現が遅れる三十三(旧三重)は厳しい防戦。 |
| 近畿 | 京都、南都、紀陽、滋賀 | 関西みらい、池田泉州、但馬 | 京都FGが広域化で勝ち残る一方、関西みらいはりそな傘下で「独立性」を喪失。池田泉州も構造的低収益からの脱却が急務。 |
| 中国・四国 | 広島、中国、山陰合同、伊予、百十四、阿波、四国、山口 | 鳥取、山口 | 四国4行が「実質1行化」に近い効率化に成功。山口は過去のガバナンス問題の影響には注意。 |
| 九州・沖縄 | 福岡、西日本シティ、十八親和、肥後、鹿児島、琉球、沖縄 | 筑邦、佐賀、大分、宮崎 | FFG(ふくおか)の独走状態。単独路線に固執した佐賀、大分は防戦一方。宮崎は県内再編(第二地銀との統合)圧力が極大に。 |
広域アライアンスの限界と「資本の論理」
これまで地銀の「緩やかな連帯」を支えてきた広域アライアンスも、2026年にはその性質を変えている。
「TSUBASA」と「SBI」の明暗
- TSUBASAアライアンス: 千葉銀行を中心に「システムを共有し、コストを分担する」モデルから、現在は「高度な金融機能を他行に外販する」プラットフォームへと進化した。主導する千葉銀や第四北越銀は「プラットフォーマー利益」を得るが、参加するだけの下位行は利用料を払うだけの「受益者(コスト負担者)」に固定されている。
- SBI地銀ホールディングス: 「第4のメガバンク」構想は、2026年に第2フェーズに入った。SBI証券のインフラを活用し、運用益で稼ぐモデルへの転換を急ぐが、不採算店舗の整理という「外科手術」に踏み込めるかどうかが、提携行の生死を分けている。
資本なき提携からの脱却
もはや「顔合わせ」程度の提携では、投資家を納得させることはできない。2026年のトレンドは、業務提携から一歩踏み込んだ「資本提携(5〜10%の持ち合い)」、さらには「株式交換による100%子会社化」へと移行している。
買収の錬金術―110億円のコスト削減シミュレーション
なぜ勝ち組地銀は、地方の小さな「負け組地銀」を欲しがるのか。その答えは、冷徹な算盤(そろばん)の中にある。

買収後の劇的変貌(シミュレーション)
預金量3兆円規模の中堅第一地銀を、メガ地銀が統合した場合のコスト削減効果(シナジー)を精査すると、驚くべき数字が浮かび上がる。
- システム統合(年間約50億円の削減): 独自のメインフレームを廃棄し、勝ち組のクラウド基盤へ移行。
- 本部・事務集約(年間約30億円の削減): 企画、人事、総務を統合。重複する管理職ポストの削減。
- 店舗・ATM網の適正化(年間約20億円の削減): 隣接店舗の統合と、現金管理の共同化。
これだけで、年間約110億円、経費全体の3割以上が削減可能だ。買収前はコア業務純益がわずか数億円だった銀行が、買収後3年で「純利益100億円」を稼ぎ出す優良ユニットへと生まれ変わる。この「バリューアップ」の期待が、2026年の再編を突き動かしている。
株主還元の「踏み絵」―PBR1倍への執念
2026年度、地銀経営陣の最大の関心事は「配当」だ。これは単なる株主へのサービスではなく、自らの「独立維持」を賭けた戦いである。
勝ち組の「累進配当」
しずおかFGや横浜FG(旧:コンコルディアFG)など、S階層の勝ち組は、利益の増減にかかわらず配当を維持・増額する「累進配当」を宣言。
これにより、「この銀行を持って入れば、確実な利回りが得られる」という投資家からの信頼を勝ち取り、PBR1倍超えを達成している。
負け組の「自社株買いができない」苦悩
対照的に、D階層の負け組地銀は、利上げによる債券含み損が自己資本を蝕んでおり、配当を増やす余裕も、自社株買いを行う余力もない。この還元姿勢の差が、株価の「格差」を広げ、安値で買収されるリスク(アクティビストの標的)をさらに高めるという悪循環に陥っている。
2026年版・地銀サバイバル強度チェックシート
あなたの注目する銀行は、2030年に「看板」を残せているか。
「うちの銀行は地域に愛されているから大丈夫だ」という精神論は、2026年の市場では通用しません。
全国の地方銀行を以下5つのカテゴリーに対し、各項目5点満点で採点してみました。
サバイバル階層マップ
合計点数(25点満点)に基づき、その銀行の2030年の姿を予測します。

【カテゴリー1】金利上昇への適応力(ALM実力)
- 貸出構成: 新規貸出の8割以上が変動金利、または金利見直し条項が適切に運用されているか。
- 有価証券の含み損: ゼロ金利時代に購入した外債や超長期国債の含み損処理が、自己資本の20%以下に収まっているか。
【カテゴリー2】収益の「質」とデジタル化(脱・金利依存)
- 役務取引利益率: 収益の30%以上を、融資の利ざや以外のコンサル、M&A、信託等で稼げているか。
- 非対面完結率: 個人向け融資や住所変更等の定型業務の80%以上が、スマホアプリやWebで完結しているか。
【カテゴリー3】コスト構造とアライアンス(経営効率)
- OHR(経費率): 経費率が60%を下回っているか。
- アライアンスの立ち位置: 共通システムやプラットフォームを「提供する側(開発側)」、あるいは「使い倒してコストを最小化できている側」か。
【カテゴリー4】資本市場との対話(株主還元)
- PBR(株価純資産倍率): 現在、0.7倍を超えているか(あるいは1倍超えへの具体的ロードマップがあるか)。
- 還元方針: 「累進配当」や「自己株式取得」を明文化しているか。
【カテゴリー5】地域独占力と再編カード(市場支配力)
- 県内シェア: 貸出金・預金ともに県内シェアが40%を超えている(または第1位である)か。
- 再編の自由度: 買収される側ではなく、他行を飲み込む「軍資金(資本余力)」と「システム基盤」を持っているか。
判定マップ
| 合計点数 | ランク | 2030年の予測シナリオ |
| 22~25点 | S:地域覇者 | 近隣県の地銀を次々と傘下に収め、数県にまたがる「巨大広域グループ」の頂点に君臨。銀行の枠を超えた地域商社・IT企業へと進化。 |
| 17~21点 | A:自立生存 | 独立性を維持。ニッチな強みを活かし、特定領域(DXや専門コンサル)でメガ地銀からも一目置かれる存在として生き残る。 |
| 12~16点 | B:アライアンス従属 | 看板は残るが、経営の実権はシステム提供元のメガ地銀や提携先に握られる。実質的には「看板を掛け替えない支店」へ。 |
| 7~11点 | C:再編ターゲット | 投資ファンドや強者地銀による買収の対象。2027年までに「経営統合」のプレスリリースを出す確率が極めて高い。 |
| 6点以下 | D:存続危機の赤信号 | 資本増強が必要なレベル。単独での生存は不可能であり、ATM網や顧客基盤を売却して、銀行としての歴史に幕を閉じる。 |
特に「カテゴリー4(PBR)」と「カテゴリー1(含み損の状況)」の相関を注視してください。この2つが低い銀行は、どんなに歴史があろうとも、近いうちに再編の濁流に飲み込まれることになります。
第一地方銀行「サバイバル強度」全62行・完全判定リスト(2026年版)
2026年、日銀の政策金利が1%に到達したことで、地銀の経営体力は完全に可視化された。以下のリストは、前述の「5つのカテゴリー(各5点、計25点満点)」に基づき、全第一地銀(持ち株会社含む)を判定したものだ。
【Sランク:22~25点】 異次元の覇者(再編を主導する「喰う側」)
この階層の銀行は、PBR1倍超えを達成し、自社システムを他行に提供する「プラットフォーマー」だ。
| 銀行名(持ち株会社) | 得点 | 判定理由:最強の生存要因 |
| しずおかFG | 25 | 投資銀行化が完成。非金融収益が5割に迫り、ROE・DOEともに地銀トップ。 |
| ふくおかFG | 25 | 「みんなの銀行」のシステムを外販。九州全域を実質的に統治する圧倒的規模。 |
| 千葉銀行 | 24 | TSUBASA連合の盟主。非対面チャネルでの成約率が8割を超え、OHRは40%台。 |
| 横浜FG (コンコルディアFG) | 24 | 横浜を基盤とする圧倒的資金力。IT投資効率が極めて高く、資本政策も盤石。 |
【Aランク:17~21点】 独立王国の王(自力で生き残る実力行)
高い県内シェアと、利上げを収益に変えるALM(資産負債管理)能力を兼ね備える。
| 銀行名 | 得点(目安) | 該当する銀行 |
| 北日本・東日本エリア | 19-21 | 七十七銀行、北海道銀行(ほくほく)、秋田銀行、岩手銀行、東邦銀行 |
| 関東・甲信越エリア | 19-21 | 常陽銀行、足利銀行(めぶき)、群馬銀行、八十二銀行、第四北越銀行、武蔵野銀行、きらぼし銀行 |
| 中部・北陸エリア | 19-21 | 北國銀行、十六銀行、百五銀行 |
| 近畿・中四国エリア | 18-20 | 京都銀行(京都FG)、滋賀銀行、南都銀行、中国銀行、広島銀行、伊予銀行、阿波銀行 |
| 九州・沖縄エリア | 19-21 | 山口銀行、西日本シティ銀行、肥後銀行、鹿児島銀行(九州FG)、琉球銀行、沖縄銀行 |
共通の特徴: PBR0.6〜0.8倍。地域内シェアが圧倒的で、コンサル収益の柱が立っている。
【Bランク:12~16点】 追随する生存者(アライアンス従属型)
自力でのDX開発を断念し、Sランク行のシステムに乗ることで生き残りを図る階層。
| 銀行名 | 得点(目安) | 該当する銀行 |
| 該当行 | 13-16 | 北洋銀行、山梨中央銀行、福井銀行、紀陽銀行、百十四銀行、四国銀行、山陰合同銀行、大分銀行 |
共通の特徴: 経営は安定しているが、独自戦略に乏しい。システムの利用料負担が重く、収益の伸びは鈍化。
【Cランク:7~11点】 再編ターゲット(買収・救済の対象)
利上げによる逆ざやや含み損、あるいは過疎化による市場縮小で「単独生存」が危ぶまれる。
| 銀行名 | 得点(目安) | 該当する銀行 |
| 該当行 | 8-11 | 青森銀行、みちのく銀行(プロクレア)、山形銀行、荘内銀行、筑波銀行、千葉興業銀行、清水銀行、富山銀行、大垣共立銀行、三十三銀行、鳥取銀行、宮崎銀行、佐賀銀行 |
共通の特徴: PBR0.3倍台。低効率な店舗網が重荷。S・Aランク行による「株式交換」での買収がいつ起きてもおかしくない。
【Dランク:6点以下】 存亡の危機(緊急避難が必要)
2026年2月時点では、金利上昇による収益構造が上方へ転換していることから、該当する銀行はないものと思われる。
このリストで「C・Dランク」となった銀行の経営陣にとって、2026年は「最後通牒」の年です。
かつての再編は、不振に陥った銀行を他行が「助ける」救済合併でした。しかし、2026年の再編は「時価総額の高い銀行が、低い銀行の資産(顧客基盤)を安く買い取る」という、極めて純粋なM&Aへと変質しています。
特に、SランクのしずおかFGやふくおかFGなどは、潤沢なキャッシュと高値の自社株を武器に、隣接する県のCランク行を「支店化」する準備を終えています。読者の皆様は、自身の注目する銀行がこのリストのどこに位置し、どの強者の「射程圏内」に入っているか、冷静に見極める必要があります。
地銀関係者の皆様は、自社の点数が「15点」以下であれば、もはや自力でのV字回復は困難であることを自覚すべきです。手遅れになる前に、どの「勝ち組」の傘下に入るのが地域顧客にとって最善かを議論し始めるのが、真の誠実さと言えるでしょう。
まとめ:2026年、銀行員に問われる「覚悟」
地銀再編の裏側で、最も大きな変化を強いられているのは、現場の銀行員だ。
システムの統合と店舗の削減が進む中、これまで「支店長」をゴールとしてきたキャリアパスは消滅した。2026年、生き残る銀行員に求められるのは、事務の正確さではなく、地域の事業承継やM&Aを完遂させる「コンサルティング能力」だ。
「地域の顔」としての看板を守ることに固執した経営陣は、いずれ市場から退場を命じられる。一方で、看板を捨ててでも強者のプラットフォームに乗り、地域の金融インフラを維持しようとする決断こそが、真の意味で地域経済を守ることになる。
2026年、地銀の看板は「誇り」から「合理性」へと書き換えられた。この大集約の先に待っているのは、かつての護送船団方式ではない。市場原理によって磨き上げられた、真に強靭な「地域金融の集合体」である。
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